■■■大腸がん(全項目を連続表示) ~ 便秘と大腸癌(大腸がん)
大腸癌
大腸とは,結腸と直腸,さらに肛門管を含めて扱い,大腸癌は各粘膜上皮から発生する悪性腫瘍で,原発性と続発性とに分類されます。
大腸癌といった場合には一般に原発性の癌腫を意味します。
組織学的には大部分が腺癌ですが,まれに扁平上皮癌があります。
続発性とは,他臓器の癌が大腸に浸潤あるいは転移したものを指します。
病理・病態生理
疫学
わが国の大腸癌罹患数と死亡数は著しく増加しており,大腸癌の罹患率は,男性は胃癌に次いで第2位,女性は乳癌に次いで第2位となっています。
また,死亡数は2002年で男性20,568人,女性17,100人と1950年に比較して約10倍となっています。急増しています。
欧米では,大腸癌の罹患率が低下する傾向にありますが、日本では激増しています。
わが国の経年的な変化をみると,結腸癌罹患率は著しい増加を示しています。
世界癌研究基金と米国癌研究財団の報告によると,大腸癌の予防因子に挙げられるもので,確実なものとして野菜と運動(結腸癌のみ),可能性のあるものとして食物繊維が挙げられています。
他ページに書きましたが、食物繊維に関して大規模臨床実験の結果では有意差が出ませんでした。
一方,大腸がんの危険因子として疑われるものは,肉類,アルコール,
(明らかなデータがあるものではビール、胆汁酸が増え直腸癌が増加します)
可能性のあるものとして,肥満(結腸癌のみ),脂肪,喫煙などが挙げられています。
なお,非ステロイド性抗炎症薬は予防的因子として挙げられています。
発生頻度 大腸癌は大腸悪性腫瘍の99%を占め,その多くは腺癌で癌以外の悪性腫瘍(肉腫)の頻度は少ないようです。
大腸癌の部位別頻度は直腸,S状結腸,上行結腸に多いようです。
また,年齢では50~70歳代に多く、性別では男性が多いです。
病態 大腸癌の発生には,遺伝的要因と環境因子の関与が指摘されています。
大腸癌発生の病態から,
①通常癌common cancer,
②遺伝癌genetic cancer,
③炎症癌colitic cancerの3種に大別されます。
1)通常癌:
通常癌は一般にみられる癌で大腸癌の大多数を占めます。
大腸癌の発癌理論として,adenoma-carcinoma sequenceと
de novo説とがあります。
(a) adenoma-carcinoma sequence:前癌病変として腺腫があり,腺腫から癌が発生し浸潤癌へと進展していくとする説。
APC遺伝子の異常により腺腫が発生し,K-ras遺伝子の異常によって異型度が増し,p53遺伝子,DCC遺伝子の異常によって浸潤,あるいは転移をきたすとする考えであり,adenoma-carcinoma sequenceの理論的裏づけとされています。
K-rasは癌遺伝子ですが,ほかは癌抑制遺伝子です。
(b) de novo説:
正常粘膜から直接癌が発生してくるという考えです。
その根拠として,大腸にも陥凹型癌(Ⅱc)の存在が明らかとなり,腺腫を介さない癌が存在すると日本人の工藤医師が証明しました。
しかし,遺伝子学的な解析の結論はまだ出ていません。
2)遺伝癌:
大腸癌で遺伝的要因の明らかなものは,家族性大腸腺腫症と
遺伝性非ポリポーシス大腸癌とがあります。
a.家族性大腸腺腫症(FAC)は常染色体優性遺伝です。
大腸に100個以上の腺腫が発生する疾患です。
発生頻度は1/17,000で男女差はなく死因の70%は大腸癌で、このような方は定期的に内視鏡検査をする必要があります。
40歳で半数,60歳までに90%に大腸癌が発生するといわれています。
胃では,胃底腺領域に過誤腫性ポリープ,幽門腺領域や十二指腸(乳頭部近傍)に腺腫や癌のリスクが高いといわれています。
治療は,予防的な大腸摘除が行われます。
b.性非ポリポーシス大腸癌は,家系内に大腸癌が多発する常染色体優性遺伝の疾患です。
頻度は全大腸癌症例の約1~5%程度で発癌は,hMSH2,hMLH1,hPMS1,hPMS2,hPMS6(GTBP)など,DNAのミスマッチ修復遺伝子の異常が原因です。
その特徴は,
①家系内に腺癌多発(右側大腸癌,子宮体癌,胃癌),
②若年発症,
③高頻度の重複悪性腫瘍の存在,などがあります。
その診断基準として,
アムステルダムの診断基準とJapanese Clinical Criteriaがあります。
3)炎症癌:
長期経過した慢性の大腸炎,特に潰瘍性大腸炎に大腸癌の合併が多いことが知られています。
潰瘍性大腸炎の罹病期間が10年以上になるとそのリスクが高くなり定期的な大腸内視鏡検査が必要になります。
その前癌病変として異型腺管(dysplasia)が出現します。
これらは腫瘍性変化と考えられ,low grade dysplasia(LGD),high grade dysplasia(HGD)に分類されます。
HGDが発見された場合には発癌の頻度が高いことから手術が選択されることが多いです。
潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌の特徴は,若年に発症し,多発傾向にあり,びまん浸潤型が多く,低分化癌や粘液癌が多く,周辺にdysplasiaを伴うことが多いとされています。
分類
a肉眼分類
わが国における大腸癌の肉眼分類は,大腸癌取扱い規約による分類が通常用いられています。
また,わが国では古くから胃の進行癌の分類としてBorrmann分類が常用されていますが,大腸でも1~4型をそのまま当てはめて表現することが多いようです。
大腸癌では2型が最も多く、0型は腫瘍の壁深達度がM,SMの癌とし,早期癌と推定されるものを指します。
その亜分類にも胃癌の肉眼型分類が引用され,隆起型はIp,Isp,Is,表面型はⅡa,Ⅱb,Ⅱcなどに分類され,その複合型はⅡa+Ⅱcなどと表現されていますが若干の差があります。
特殊型として結節集簇様病変などもあり施設により対応が違うこともあります。
b進行度分類
ア) 深達度分類
大腸癌取扱い規約による壁深達度分類が一般的です。
なお,組織学的診断には小文字,肉眼的診断には大文字を使用します。
早期大腸癌の定義 粘膜および粘膜下層にとどまる癌でリンパ節転移の有無を問いません。
なお,早期癌はm癌,sm癌であり,mp癌以上の浸潤癌は進行癌に分類されます。
イ) 病期(Stage)分類
1)Dukes分類:
壁深達度とリンパ節転移との有無を組み合わせた分類であり,予後との相関性が高い分類です。
2)Astler-Coller分類:
Dukes分類をより細かく分類したものです。
3)大腸癌取扱い規約病期分類:
上記の壁深達度にリンパ節,腹膜,肝,他臓器への転移の有無や程度を加えて病期を分類したものである。
日本では多くはこの分類にしたがっています。
臨床所見
臨床症状
早期癌
早期癌の発見の動機となる症状の多くは血便です。
また,無症状であるものが多く,何らかの症状やスクリーニングのため偶然発見されることが多いようです。
進行癌 発生部位によって症状がやや異なります。
直腸やS状結腸では,血便,腹痛,便秘,便の細小化,イレウス症状,排便時の違和感,便通障害などがみられます。
右側の癌では,腸管腔が広く,腸の内容も液状であるため症状が出現しづらく,進行した状態で発見されることがままあります。
したがって右側の癌(上行結腸)では,症状としては,腹部の腫瘤,貧血,体重減少,不定の腹痛などが多いことになります。
身体所見
大腸癌はある程度大きく発育した場合,腹部腫瘤として触知することができることがあります。
腫瘤は上行結腸や盲腸癌で触知できることが多いが,左側結腸で触知できるものは少ないです。
腫瘤を触知した場合には,部位,大きさ,硬さ,表面性状,可動性などの性状を確認する必要があります。
また,肝転移のチェックが必要になります。
癌による閉塞所見としてグル音亢進やイレウスの所見として金属音などが聴取されることがあるそうですが、自分の経験ではいまだありません。
大腸癌では体表面のリンパ節転移はまれです。
検査所見・診断・鑑別診断
直腸指診
直腸癌の診断法として,複雑化する消化器科の診断体系の中にあって直腸指診は最も基本的で重要な診断手段ですが、若い女性などから嫌われる傾向にはあります。しかし、血便が出たときなどは必ず受けましょう。
大腸癌の約1/3が直腸に存在し,直腸癌の約70%は肛門から触知される部位に存在することから,示指を肛門内に入れ腫瘤を触知することは,腫瘍の存在診断と深達度診断においても重要な検査です。
重ねて書きますが、血便の時などは必ず検査を受けるべきです。
また,肛門管の異常や痔核,痔瘻の診断,腫瘍やポリープの有無だけではなく,男性では前立腺の状態もある程度分かります。
便潜血反応
免疫学的便潜血反応検査の開発によって,大腸癌におけるスクリーニング検査として広く用いられており、学問的に費用対効果が優れていると確認ができている唯一の集団検診の方法です。
これはヒトヘモグロビンとの抗原抗体反応を利用したもので下部消化管の出血のスクリーニング法として用いられており,職域や地域などの集団検診や人間ドック,大腸癌検診の一次スクリーニング法として広く用いられている。
この方法では胃などの上部消化管からの出血は十分に検知できません。
大腸癌検診 一次スクリーニングとして便潜血反応検査2日法を行い,いずれか1回でも陽性となった場合には,二次スクリーニングとして大腸内視鏡検査を行うものです。
大腸癌検診の標的としている癌は進行癌であり,便潜血反応の感度が設定されているが,実際は早期癌が多く発見されています。
便の潜血の検査は内視鏡検査を受ける一つのきっかけとして認識した方が良いと思います。
早期発見には便潜血反応が有効ですが、データ上便潜血が陽性になるのは(3回施行して一回でも陽性になる事として) 2センチ以上の大腸がんでも約80%というデータがあります。
つまり便潜血がマイナスでも完全には大腸がんを否定はできません。
また便潜血は一度でも陽性の場合は大腸の検査(望ましいのは大腸内視鏡検査)を受ける必要があります。
よくあるのは、「一回陽性だったけど、つぎの便は陰性だったので検査はいらない・・・」といわれる方がおられます。
内視鏡検査を受けたくない・・・と思いますが、一度でも便に血がまじっていた場合は必ず大腸の検査は受けた方が良いです。
腫瘍マーカー
大腸癌における腫瘍マーカーとして,CEA(carcinoembryonic antigen)が知られていますが,大腸癌に特異的なものではなく,大腸癌のスクリーニングには正確には不適当です。
しかし肝転移や局所再発の指標としては極めて有用です。
大腸癌で上昇する可能性のある腫瘍マーカーは,CEAのほかにCA19-9などが知られています。
注腸造影検査
経肛門的にバリウムを注入し,さらに空気を入れた二重造影像により診断しますが、いろんな意味で難しい(うまくて真剣に検査をしている人でなければ正確に判断ができない・・・という意味で)検査です。
スクリーニングにはできれば使用しないですめばよいのですが・・・
癌の存在診断のほか,壁の変形から深達度診断も可能で逆に手術の前には必ず必要な検査です。
無変形はm癌,角状変形,弧状変形はsm癌,台形状変形は進行癌を示します。
さらに両側変形をきたしたものは,apple-core signやnapkin ring signといわれ,大腸の進行癌の典型像とされています。
進行癌は2型が多く(70~80%),4型のスキルス癌は大変少ないです。
内視鏡検査
内視鏡を経肛門的に挿入し,直接観察して診断する方法で現在では一番正確な検査です。
最近のスコープは高解像度の電子スコープとなっており,鮮明な画像が観察されるようになりました。
通常観察のほか,色素散布法や拡大内視鏡,超音波内視鏡など特殊な内視鏡も開発されており,より精度の高い深達度診断が可能です。
特に,陥凹型の癌や表面型の早期癌などの発見率は大腸内視鏡で高く注腸検査では低いです。
超音波・CT・MRI検査
大腸癌自体の診断より,肝転移や腹腔内リンパ節転移などの検索に主に用いられます。
しかし,直腸癌や肛門癌,痔瘻癌などでは,CTやMRIが周辺臓器との関係や壁の浸潤の程度なども詳細な像で描出できるようになっており情報源として有用である。
virtual colonoscopy
最近のCTやMRIの進歩により画像を連続した立体画像で表示することで,大腸内をあたかも見ているようにイメージする方法です。
アメリカではかなり普及しているようです。これは医療保険の違いが大きいのではないかと思います。
前処置がきちんとできていれば大きな病変は間違いなく発見できると思いますが、完治が望める早期癌の発見は現実的には難しいような印象です。
治療
治療は,早期癌でリンパ節転移の可能性の少ないm癌とsm癌の一部(浅い浸潤癌)が内視鏡的治療の適応となります。
普通に内視鏡検査で見た状態でもある程度は癌の深さは分かりますが、いろいろな方法で癌の深達度を正確に把握しようと医学は進歩しています。
内視鏡的治療法
適応
内視鏡的治療の適応となる癌は,m癌,およびsm浅層浸潤癌でする。
方法
1)スネアによるポリペクトミー:
有茎,亜有茎,無茎性病変でスネアで基部を絞扼し,高周波電流を通電して切除する方法です。このスネアを開発したのが新谷ひろみ先生です。
2)内視鏡的粘膜切除術
endoscopic mucosal resection(EMR):
表面型に対する切除法でする。
病変の基部に生理食塩液 ⇒ を注入して,病変を挙上させ,スネアをかけて切除する方法です。
偶発症として出血や穿孔があるので,十分なインフォームドコンセントのもとに内視鏡的治療を行う必要があります。
追加腸切除の適応
早期癌の内視鏡的摘除後の病理診断で以下のようなリスクファクターが認められた場合には追加腸切除の適応とされます。
・切除断端陽性
・massive invasion(深層浸潤癌)
・脈管侵襲陽性(静脈,リンパ管)
・低分化型・未分化型癌
外科的治療
内視鏡的治療の適応外の癌は外科的治療の適応です。
その方法として,各部位によって右半結腸切除術,左半結腸切除術,S状結腸切除術,腹会陰式直腸切除術(Miles operation),直腸低位前方切除術などの手術法があります。
最近では,腹腔鏡下手術や経肛門的マイクロサージェリー(TEM)などの縮小手術が一般化し,増加しています。
補助療法
転移や外科的治療の適応外の病期の場合には,化学療法が選択されることが多いです。
また,術前に放射線+化学療法を行い,病巣を小さくしてから手術を行う場合のあります。
経過・予後
大腸癌は同時性,異時性に多発することが多く,約10%ほどみられます。
外科的および内視鏡的治療後,定期的な異時性癌のサーベイランスが必要と考えられています。
★ここで外科の先生が読んでいたら怒りそうな事を書きます。
こういう先生が多い・・・という事ですべての外科の先生ではありません。
大腸がんの手術をした患者さんの残った大腸は癌が高率に発生します。当然、大腸内視鏡検査は反復検査すべきと自分は思いますが・・・・している外科の先生は少ないです。
患者さん側としては自分で検査を申し出た方がいいです。
きちんと病院に通院しているから大丈夫・・・ではありません。